【婚活成功物語:第2話】「婚活開始は婚活サイトから」

 

行きつけの居酒屋で、僕は久しぶりに電話をくれた友人・黒田と飲むことになった。

(第一話はコチラ【婚活成功物語:第1話】「婚活のはじまりはサヨナラから」

 

 

黒田は僕の顔を見るなり、開口一番、説教を始めた。まゆみとの出会いのきっかけをくれたのは、黒田である。アラサー女子の気持ちも考えない鈍感バカが、と言われてしまうと、もう反論することもできず、ただ平謝りをするばかりだった。

 

「まあでも、いつまでも失恋を引きずっててもしょうがないからな。次だ、次」

 

でも、もうお前に紹介するような女の子はいないからな、と、黒田は鼻息を荒らげる。

 

「なんか、彼女と別れてみて思ったんだけど、僕はこのまま結婚できずに死ぬんじゃないかと」

 

「彼女と別れた直後は、そう思いがちだけどな」

 

「考えてみたらさ、30過ぎてから女の子と出会ったこと自体ないんだよ」

 

彼女がいる間はまったく気にならなかったものの、いざ別れてみると、日々の生活で誰かと新しく出会うなんていう経験がここ数年ほとんどないことに気がついた。朝起きて会社に行き、夜遅くまで働いて帰宅する。たまの休みは部屋の掃除や洗濯に追われてどこにも行かずに終わってしまう。友達もみんな結婚して合コンのような場もなくなり、僕が「彼女が欲しい」「結婚したい」と思っても、どうしようもないのだ。

 

「そりゃ、もう”婚活”しないとなかなか難しいだろうな」

 

「婚活?」

 

就職活動を「就活」と言うように、結婚に向けて自ら積極的に活動することを「婚活」ということはもちろん知っていた。

今まではあまり気にしていなかったけれど、言われてみればちょこちょこ聞く言葉だ。座って待っていても奇跡の出会いなんかは降ってこない。イマドキの社会人は、自分から動いていかないとなかなか結婚までたどり着けないのだ。

 

「婚活って言っても、何すればいいかわかんないなあ。結婚相談所に行くとか、お見合いするとか、そういうこと?」

 

「いきなり結婚相談所とか見合いはハードル高くないか?」

 

「高い」

 

「最初は気軽に、スマホでできる婚活サイトでも使ってみたらどうだ?」

 

婚活サイト?と首をひねる僕から黒田はスマホを奪い取り、なにやらサイトにアクセスした。

酒を飲みながらもろもろ情報を入れて会員登録し、簡単なプロフィールを入れると、もう使えるという。
黒田が指先でちょこちょこと操作すると、あっという間に女性会員の画像がずらりと表示された。街を普通に歩いていそうな女性ばかりで、中にはびっくりするほどカワイイ子もいる。

 

「なにこれ、すごいね」

 

黒田の話によると、最近はこういった婚活サイトを使って出会うことも一般的になってきているのだという。

僕が「出会い系サイトじゃないのこれ?」と聞くと、お前はいつの時代の人間だ、とあきれられた。

スマホでも簡単に登録できてしまうこともあって最近は利用者が大幅に増えているんだそうだ。

 

「手始めに、ここから始めてみればいいさ。とんとん拍子に行くかもしれないし」

 

「だといいけど」

 

スマホの画面に目を落とす。

僕の「婚活」は、ここからスタートしたのである。

 

 

壁を越えろ!婚活サイト攻略法

 

 

黒田と飲んでから1週間後。婚活サイトを使っての婚活は、ようやく使い勝手がわかってきた。

婚活サイトを使った婚活の初めの一歩は、「メッセージのやり取りを開始すること」だ。会員は基本的に、お互い気になる人とメッセージをやり取りして仲を深めることになるのだけれど、まずは「メッセージのやり取りをしたい」というリクエストを送ったり送られたりして、相手とマッチングする必要がある。

マッチングが成立してはじめて自由にメッセージのやり取りができるようになるのだ。

最初は、近くに住んでいる女性を探して、「お、かわいい!」と思う女性に、何も考えずリクエストを送っていた。けれど、何件送ろうとも、一向にマッチングしない。なんだよ、とふてくされているうちに、だんだんマッチングしない理由が、鈍い僕でも理解できてきた。

 

プロフィール写真を見てぱっと目をひくような女の子には、ものすごい数の男性からリクエストが送られてきているのだ。

モテる女の子は、その中から選びたい放題である。当然、条件のいい男を選ぶことになるだろう。

逆に、リクエストをたくさんもらっている男性も、プロフィールが魅力的だ。こんなサイトを使わなくたって彼女くらい簡単にできそうなイケメンもいるし、若くして年収が大台に乗っているような人もいる。僕のように、顔は十人並み、特技・趣味も特になく、年収も同年代の平均より低い、という男が、人気のあるかわいい子に選ばれようもないのだ。

 

まずは、プロフィールに興味を持ってもらえるようにしないと始まらない。

僕は、試行錯誤しながら自分のプロフィールを充実させていった。自分のキャラクターをわかってもらえるように自己アピール文を何度も書き直し、趣味や特技、といった欄も、ないなりに無理やり全部埋めた。さらに、相手のプロフィールもよく読んで、共通項がある人にだけリクエストを送るようにしたのである。

そうすると、毎日惨敗続きだった僕でも、10件に1件くらいマッチングするようになった。進歩である。

やっぱり攻略の鍵はプロフィールか、と、僕はさらにプロフィール充実に力を入れることにした。

 

カメラアプリを使って何度も写真を撮り直し、奇跡の一枚というべきベストショットをプロフィール画像につかう。趣味、特技も女性から質問されやるように幅広く書いた。
仕事内容も「将来性がある」ように書き換えた。

 

これらの努力の効果もありマッチングする回数が増えていった。

プロフィールを充実させ、いくつかマッチングした中で、特に気になる女性がいた。「みずほさん」という28歳の女性だ。リクエストをもらっている件数も多い写真で見る限りかわいい女性で、趣味は料理、特技はお菓子作り、という男性に人気になりそうな女性である。

こな女性がなんで僕なんかに?と最初は疑ってかかったのだが、どうやら僕が「好きなミュージシャン」として挙げたバンドの大ファンだそうで、一緒にライブに行ったりできる人を探しているそうだった。

 

どこが相手にひっかかるかわからないものである。婚活サイトのプロフィールはできるだけ多く書いたほうがいいのである。

 

みずほさんとのメッセージをやり取りは楽しかった。話をすればするほど、ひょっとしたら運命の女性かも、と思えてもくる。

実際に会って話してみたい。毎日メッセージのやり取りを続けていくうちに、僕の胸の中でふつふつとそういう思いが膨らんでいった。

 

「今度、ごはんでも食べに行きませんか?」

 

メッセージをやり取りしだしてから10日ほど経ったある日、僕は意を決してそう誘ってみた。話はしているとはいえ、あくまで婚活サイトを使ってメッセージを送りあっているだけだ。会うとなると、それなりにハードルは上がる。ある程度の信頼関係が出来上がってないと難しいかもしれない。

 

メッセージの返事が来るまでは、試験の結果を待つ受験生のような気分だった。仕事中に上司の目を盗んで何度もスマホを確認した。なかなか返事が来ない。まだ言い出すのが早かったか。それとも会うほどではないと思われたのか。意気消沈していたところに、ようやくメッセージが届いた。

 

――じゃあ、来週の週末とかどうでしょうか。

 

その瞬間、僕はガッツポーズをしながら、声に出さないように、「やった!」と叫んでいた。

 

 

夢の世界から現実へ

みずほさんと会う当日。

彼女が「イタリアン好き」というので、僕は普段のデートでは入ったことのない、ちょっとお高めのレストランを予約していた。予約したはいいものの、飯と言えばいつも安居酒屋という僕は、そういうレストランになじみそうな服なんか一着も持っていない。仕方がないので、いつも会社に着ていくスーツで行くことにした。

待ち合わせは、六時半にとある駅前の広場にした。僕は時間より少し前に到着し、のぞみちゃんが来るのを待っていた。昨日までに、彼女のプロフィールは頭に叩きこんできた。もし、今日の食事で会話がはずめば、一緒に好きなアーティストのライブに行こう、と誘ってみようかと思っていた。

 

――すみません、ちょっと遅れたけど着きました。

 

みずほさんからのメッセージ。僕は、待ってないですよ、などとかっこつけつつ、どこにいますか?と尋ねた。プロフィール画像は見ていたものの、実際に動く姿を見るのは初めてだ。雰囲気の似通った人を見て、あれかな?いやちがう、というのを何度か繰り返した。

LINEを使って通話し、お互い、自分の服装などを言い合って、ようやく、なんとなくそれっぽい人影を見つけた。スマホを片手に通話もしているようだし、近寄るってみると、口の動きと耳から聞こえてくる声とが一致する。本人に間違いない。

 

「はじめ、まして。柴太郎です」

 

「あ、どうも」

 

一瞬、なんと言っていいかわからなくて、僕は笑ってごまかした。みずほさんは、プロフィール画像の雰囲気そのままの空気を持った女性だったのではあるのだけれど、そのプロフィール画像から僕が考えていたイメージと、なんというか。

――イメージとぜんぜん違う。

 

今思えばみずほさんのプロフィール画像には、確かに首から下があまり写っていなかった。髪型も顔の輪郭が隠れるようなスタイルだったし、全体感は巧妙に隠されていたのだ。

顔も、プロフィールのように透明感のある感じでもなく、不機嫌な表情の女性。自分のことは棚に置いて言うが、昨今の画像加工アプリの精度はすさまじいものがある。

 

もちろん、見た目がすべてではないし、話してみれば案外、とも思ったのだけれど、会う前に自分の中で美化しすぎていたせいか、その落差を受け入れることがなかなか難しかった。最初からこういう女性だとわかっていたら、もう少し心構えも違っていただろう。

 

そしてそれは、どうやらみずほさんも同じ感覚のようであった。

 

 

 

 

僕のプロフィール画像も、修正したでしょと言われてもなんら差し支えないほどの奇跡の一枚である。僕を見た瞬間に、みずほさんの目がすっと沈んだのがありありとわかった。実物の僕にがっかりされたんだな、と思うと、テンションが一気に下がる。

 

「とりあえず、お店、行きましょうか」

 

何かが変わることもあるかもしれない、と、僕は予約したレストランに向かった。でも、最初に二人の間に漂ってしまった空気を払しょくすることはできなかった。

味のよくわからない食事を、相手を気遣いながら食べる。カッコつけて彼女の分まで払ったが、僕の普段の食事からするとえらい高価な夕食になった。

 

帰り際、「また時間があったらどこか行きましょう」と僕は笑ったけれど、きっともうないだろうな、と思っていた。みずほさんもそう思っていただろう。そうですね、と笑ってくれたものの、その日以来、みずほさんからメッセージが来ることはなかった。

 

たぶん、なにか人を引き付けるようなもの――容姿だったり年収だったり、そういうものがある人は、婚活サイトでも不自由なく恋愛できるんじゃないかな、と僕は思った。

でも、僕のように人に誇れるものなど特になにもない人間は、土俵に上がるために背伸びをせざるを得ない。会うところまでは、プロフィールをよく見せればなんとかなる。でも、実際に会ってからは、本来の僕で勝負しなければいけないのだ。正直でいると会うことが難しいし、よく見せようとすればするほど会ってからが難しい。

 

その日、僕は、婚活って一筋縄じゃいかないんだな、ということを思い知らされたのだった。<第3話につづく

 

 

 

 

 

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