「よう、どうよ、最近」
「別に、何も変わらないよ」
子どもが生まれた、という黒田の連絡を、僕はぼんやりと聞いていた。
ついこの間さくらちゃんと結婚した、と聞いたような気がするのに、あっという間に子供が生まれるくらいの年月が経っている。
僕は、つい先日35歳になった。婚活を始めて丸3年だ。あの黒田がパパになったというのに、僕は同じところをぐるぐると回っている。
折れる心 婚活疲れと限界
マッチングアプリに、街コン、婚活パーティ。これまで駆使してきたサービスを使って、婚活は継続してきた。
何人かの女性といい感じになって、実際交際まで至った人もいた。でも、長い期間は持たなかった。早いと1ヶ月、長くても2、3ヶ月で破局してしまう。
僕の婚活にあたって、一つのネックは、僕の仕事の不安定さだった。仕事は忙しいくせに、会社が小規模な分、僕の収入はそう高くはない。結婚を考えている女性からすると、少々頼りなく見えてしまうようだ。
もう一つは、年齢だ。男の35歳というのは女性側から見て一つの区切りであるようで、つまりは「おじさん」扱いされることが増える年齢ということだ。
弊害は、すぐにわかった。マッチングアプリでリクエストが通る率が如実に低くなったのである。街コンや婚活パーティも年齢制限に引っかかって、参加できるイベント数がぐっと減ってしまった。
せっかく自分に自信が持てるようになってきたのに、年齢というどうしようもないもののために、婚活の土俵に上がることすら難しくなってきてしまったのだ。
――もうだめかもしれないなあ。
3年間、いろいろなサービスや自己投資に結構なお金も使った。
やれるだけのことはやったし、これ以上を求められてもどうしようもない。最近は晩婚化が進んでいるとはいえ、男性の生涯未婚率は20%を超えているのだそうだ。
5人に1人は、生涯独身のまま死んでいくことになるということだ。婚活をここまでやってダメなのだから、僕は結婚できない運命だったのだと思うしかない。
「あきらめんのか?」
「いやまあ、うん。 …もう少し、がんばってみるわ。」
婚活を成功させるためには仕事の環境を変えなければいけないのかな、と僕は思った。
忙しいだけで給料が安い会社ではあったが、それでもキャリアを積むことだけはできた。35歳。
しかしたら転職も最後のチャンスかもしれない。年齢とともに年収を気にする人もさらに増えるだろう。
あと一年だけ、全力の婚活をしてみようと考えた。
婚活と一緒に転職活動である。人生で一番忙しい一年になるかもしれなかった。
最後の婚活、結婚相談所!
ついに僕は結婚相談所へ登録することにした。
婚活サイト、街コン、婚活パーティーと参加してそれなりに出会いはあったもののどれも結婚まではたどり着かなかった。
最後の望みを掛け、結婚に対して本気な人たちがいるであろう結婚相談所へ相談にいくことにしたのだ。
これまでの婚活サービスにもいろいろあったように、結婚相談所にもいくつか種類があるようだった。
まずは、結婚に関する詳細な条件を聞き取って、できる限り条件の合いそうな相手を見繕ってくれる「データマッチング型」の相談所。
そして、老舗に多いのが、サポートしてくれるアドバイザーがつく「コンサルティング型」の相談所だ。
僕が選んだのは、後者。
相談所自体が謳っている成婚率の高さにひかれたのと、やっぱりプロの視点で合いそうな人を選んでもらうのが一番ではないかと思ったのだ。
僕の担当になってくれたアドバイザーは、意外にも若い女性だった。まだ結婚もしていないらしい。自分で経験のない人が人の結婚の面倒を見られるのだろうか、と少し不安にも思ったが、まずは任せてみよう、と考えることにした。
「柴太郎さん、結婚相手に求める条件とかありますか?」
「条件?」
「そうです。絶対譲れないものがあれば、あらかじめぜひ」
言われて気づいたが、今までの婚活で、僕は相手に対して明確に条件を考えていなかった。
結婚相談所では、自分がどういう人と結婚したいのか、事細かに聞かれる。
条件シートへの記入、性格診断テストの受診。初回の面談はなんと2時間にも及んだ。さすが、かかる費用も別格だけれど、婚活に対する本気度が他のサービスとは違うな、という印象だ。
「最後に一つお聞きしますね」
「一つ?」
面談の終わりに、アドバイザーさんが最後の質問とやらを投げかけてきた。
「柴太郎さんは、どうして結婚したいと思うのですか?」
どうして、と言われて、僕は面食らった。どうしてだろう。漠然と結婚したい、とは思っていたけれど、それがどうしてなのかはわからない。結婚して安心したいのかもしれないし、将来孤独になるという恐怖から逃げたいからかもしれない。
「その、街とか歩いてると、家族連れとかいるじゃないですか」
「そうですね」
「最近、それがうらやましいなって思うんですよ。幸せそうだなって」
「幸せそう、ですか」
「結婚できれば幸せってことはないのかもしれないんですけど、結婚してみないと幸せかどうかわからないですしね。でも、そういう幸せを、僕も感じられたらいいなと思って」
アドバイザーさんが、大きくうなずきながら、僕の目を見た。
「私、柴太郎さんは大丈夫だと思いますよ」
「本当ですか」
「正直な人だなって思いましたし、そういう男性を求めてる女性会員さんもいっぱいいらっしゃいますから」
だから、大船に乗ったつもりで。そう勇気づけられると、なんだか鼻の奥がつんとなって、胸が詰まった。
なんとかよろしくお願いします。僕は、自然と頭を下げていた。
この記事に登場している「結婚相談所の種類」についてコチラの記事を参考にしてください:
参考リンク:結婚相談所おすすめランキング!実際に入会&インタビュー取材を行いました。
運命の出会いは突然に
僕が選んだ結婚相談所のシステムはこうだった。
アドバイザーが、僕と女性会員の条件などを照らし合わせて、合いそうな相手をチョイスする。一度、会って話す機会をセッティングしてもらい、相手を気に入れば、継続して会いたい旨をアドバイザーに伝える。
ダメだった場合は、何がダメだったかをアドバイザーにフィードバックする。アドバイザーは、会員の好みや考え方を理解しながら、プロならではのアドバイスをくれる。
実は、結婚相談所に紹介される女性というと、僕はあまりいいイメージはなかった。
自分のことは棚に置いて、やっぱり、性格的なものとか環境的なものに問題があって結婚できずにいる女性が、最後に駆け込んでくる場所、という先入観があったのだ。
ところが、紹介される女性は普通に結婚していてもおかしくなさそうな女性ばかりだった。もちろん、時折癖の強い方もいらっしゃるけれど、多くは真剣に結婚しようと考えている普通の女性だ。
僕は、最初のひと月で、いきなり5名の女性を紹介してもらうことができた。条件がどうしても折り合わなかったり、相手からいまいち、と判断されてしまったりして落胆したこともあったけれど、今までの婚活よりも可能性は強く感じることができた。
月末、5人目に紹介してもらったのは、ひとみさんという年下の女性だった。
待ち合わせ場所は、奇しくも3年前、まゆみと別れたランドマーク近くの広場だった。アドバイザーから指示を受けた通り、近くのカフェに入って、改めて向かい合った。
ひとみさんはあまりテンションの高いタイプではないけれど、かといってしゃべらない人ではない。
穏やかで、ころころと涼やかに笑う。パッと目を引くような美人ではなかったが、表情がとてもかわいらしい人だな、と僕は思った。
「柴太郎さんは、お仕事はお忙しいんですか?」
「その、実は今は、転職活動中でして」
「転職できるのも年齢的にそろそろ難しくなるので、少しでも条件のいいところに行ければと」
「向上心がおありなんですね」
向上心がある、なんて、今までに言われたことが一度もなかった。ひとみさんの受け答えはとても心地よくて、話していくうちにどんどん引き込まれていった。
どうしてこんないい人が今まで結婚できずにいたのだろう。気になって、ぶしつけとは思いながらも理由を聞いてしまった。
「実は…昨年まで親の介護をしていまして」
結婚相談所に来る人の事情は様々だ。
ひとみさんは、二十代半ばから去年まで、ずっと体調が優れなかったお父さんの介護をしていたのだという。
いまは一段落したものの年齢的に本格的に結婚を考え、早めに真面目な出会いができる結婚相談所に登録したのだという。
「あの、よかったらですけど」
「はい」
「今度、夜ご飯でも食べながらゆっくりお話ししませんか?」
話し始めて1時間ほど。誘うにはまだ早いかと思ったけれど、僕ははやる気持ちを抑えることができなくなったのだった。アドバイザーからは、変に理屈で考えるより、思ったことを正直に話したほうがいい、というアドバイスを受けていた。
「そうですね。ぜひご一緒できれば」
「よかったら、お店お取りしておきますよ。どういうところがお好みですか?この辺だと、ちょっと小じゃれたイタリアンのお店とかなら知ってます」
ひとみさんは少しうつむき、はにかんだような笑みを浮かべた。
「私、その、おしゃれなお店とか行き慣れてなくて、緊張しちゃうので」
――普通の居酒屋さんでいいんです。
「運命」という言葉をあまり軽々しく使いたいとは思わないけれど、僕には運命の出会いが訪れたのだと思えた。
いろんな婚活サービスを利用して、たくさんの女性と会って話をして。挫折して、自信を失って、何度もあきらめようと思ったけれど、それも、今日この瞬間のために用意された試練のようなものだったのかもしれない。
僕がことごとく婚活に失敗したおかげで、婚活を始めたひとみさんとの運命の糸が交差したのだ。
「あの、じゃあ、僕の行きつけが一軒あってですね」
「あ、じゃあ、そこがいいです、私」
婚活のゴールは、幸せの始まり
結婚相談所でひとみさんと出会ってからは、とんとん拍子に話が進んだ。
すっかり元気になったひとみさんのお父さんと、いつも娘のことを心配していたお母さんは、一日も早く娘を結婚させたいと強力に後押しをしてくれたし、僕のことも気に入ってくれたようだった。
何より、ひとみさん本人が、僕との結婚を望んでくれた。きっと、穏やかな家庭を作れるから。そう言ってくれたのだ。
僕たちは、交際開始から3ヶ月で双方の親とあいさつを交わし、婚約することになった。
そして今日は、ひとみさんのご両親の結婚記念日でもある。
これから、僕とひとみさんは市役所に行って婚姻届を提出する。あと数時間後には、僕たちは夫婦になっている。
ひとみさんのご両親に「ひとみさんを必ず幸せにします」とつから強く伝えた。
僕たちは立ち上がった。
「じゃあ、行ってきます」
ひとみさんのご両親に見送られながら、僕たちは緑の紙を携えて、役所に向かった。
ひとみさんの家からは、タクシーで15分ほど。到着して、少し緊張しながら建物の中に入ろうとすると、入り口で小さな子供を連れた男女が、僕たちを待っていた。
黒田と、さくらちゃんだ。
「しかし、柴太郎が結婚とはね」
「結局3年かかったよ。」
「柴太郎にはもったいないくらいの女性と出会えてよかったじゃん」
黒田が、「夫」としての先輩面を吹かせながら、僕を役所の中に案内してくれた。
婚姻届はスムーズに受理された。役所の人が、写真を撮りますか?と気を利かせてくれるが、それは俺の役目なんで、と、黒田が割り込んできた。
見ると、えらくがっしりした一眼レフカメラを持っている。
市役所の片隅に、ひとみさんと二人で並ぶ。ちらりとひとみさんを見ると、少し恥ずかしそうに笑っていた。黒田が周囲の迷惑も顧みずにカメラを構えてアングルを決める。もう少し寄れ、とか、もう少し顎を上げろ、とか、プロでもないのにいちいちうるさい。
「じゃあ撮るぞ!せーの」
―― 結 婚 お め で と う !
いくぶんドタバタはしたが、僕とひとみさんは夫婦になることができた。3年に渡った、僕の婚活のゴール。
そこには、幸せの始まりが待っていたのであった。
<了>
このサイトを通じて一人でも多くの人が幸せな結婚ができるように
僕が実際に経験してきた「婚活物語」いかがでしたか。
「婚活?よくわからない」
「婚活?なんだか怪しい」
「婚活、全然うまくいかず不安」
「婚活、嫌な思いばっかり」
そんな人がこのサイトを通じて少しでも婚活に関する情報を得て、前向きに婚活に取り組んで欲しいと僕は思っておます。
僕は3年間の婚活を経て結婚をしましたが、その後もご縁があって今もこうして婚活業界にたずさわった仕事をしています。
今も結婚相談所や婚活パーティー運営会社、婚活サイト、マッチングアプリ開発会社といった婚活サービス運営会社の方とも定期的に打ち合わせや情報交換をしたり、まさにみなさんのような婚活真っ只中の方々ともいろんなお話をしています。
僕の婚活は終わりましたが”婚活”にたずさわっている人たちが好きですし、”婚活”を経て運命の相手に巡り合って幸せな結婚をする人たちをみると嬉しくなるので、このお仕事はまだまだ続けていきたいと思っています。
でもみなさんは婚活は長くするものではないのでさっさと始めて早めに終わらせましょう。
いつまでも婚活に自分の人生の大切な時間と労力を注ぐのではなく「婚活を通じて出会った運命の人」との時間を大切にしてください。婚活が終わってからが幸せな人生のはじまりなのですから。
婚活を早く終わらせるためのお手伝を僕はしていきます。
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婚活コンサルタント 柴太郎(しばたろう)
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